ERC1400の提案 (2018/9/10~9/15)
本連載では「ERC1400とは何か」をテーマにERC1400をわかりやすく解説していきます。 第1回の記事ではERC1400とは何かについて解説しました。 今回、第2回『ERC1400の議論と提案の経緯』では「ERC1400の提案 (2018/9/10~9/15)」をテーマに解説を行っていきます。なお当サイトでは過去にDeFi(分散型金融)に関する連載を行っており、その中で7-ST(Security Token)の概要・市場・STOプロジェクト紹介という記事でERC1400と関連のあるセキュリティ・トークンやセキュリティ・トークン・オファリングについて解説してあります。そちらも別途お読み頂けるとERC1400についての理解がより深まります。
概略
2018年9月10日にPolymathチームによってERC1400が提案されました。提案内容はPolymath社のプロダクト「ST-20(バージョン2)」というST規格が元となっています。STの発行プラットフォームが乱立する中、その中で最もSTの開発が盛んなPolymath社が、STの業界標準規格の作成を目指して、ERC1400を提案するにいたりました。議論内容
初期ERC1400の主な議論のポイントを紹介します。
- 目的
- セキュリティトークンの標準規格を確立して、取引所やウォレットなどプロバイダー間で、相互運用性を実現します。
- 将来拡張可能な規格である必要があります。
- 機能
- Tranche(トランシェ)
- 現在はPartitionと呼ばれていますが、当時はTrancheと呼ばれていました。
- Trancheは、資産の種類を表します。1つのトークンコントラクトに複数の資産の種類を設定できるようにする機能です。1つのトークンにサブカテゴリを持たせ、個々のプロパティによって、トークン保有者に異なる証券の権利を付与できます。
- Trancheには、設定・管理・移転・参照のロジックが必要で、実装に複雑さが伴います。優先度の高い機能ではない為、他のEIPに分割すべきという意見がありました。
- 異なるTrancheは市場価格が異なり、「流通市場(セカンダリ)では、それらにどのように対応するのか?」という課題があります。
- 強制移転
- 法律違反者の資産を没収したり、トークンを保有するアドレスの紛失に対して対応する機能です。法的観点から必須の機能になります。
- この機能はERC777でも実装されていますが、完全な実装ではない為、ERC777を継承するかオプションにして、新たに関連機能をセキュリティトークンの規格の一部として、実装するか検討する余地が残されています。
- Tranche(トランシェ)
- メタデータ
- トークンの移転時に引数にメタデータを持たせることで、そのメタデータの真正性を利用して、移転の検証をオフチェーンに委譲できます。
- 移転の検証は、オンチェーンで実施すべきだという意見もあります。
- その他
- 移転を凍結できる必要があります。
- 移転が成功するかを事前に確かめる機能が必要になります。
- 証券に様々な権利が付与されることを前提に規格は作成されるべきです。例えば議決権の付与や代理投票、配当権などです。
結論
このスレッドは1週間にも満たない期間でしたが、上記に全ては載せられないほど多くの議論が行われました。そしてPolymathチームのAdamdossa氏が主導する形でERC1400は以下の形でその後の議論を行なっていくことが決まりました。
- 結論
- EIP1400はEIP1400とEIP1410に分割します。
- EIP1400
- EIP1410
- 理由
- 議論で複数の焦点を洗い出すことに成功しました。提案・議論は、1つ1つの焦点に絞って、進行していくべきだからです。
- 議論で複数の焦点を洗い出すことに成功しました。提案・議論は、1つ1つの焦点に絞って、進行していくべきだからです。
- EIP1400はEIP1400とEIP1410に分割します。
初期ERC1400のGitHubスレッド
まとめ
第2回『ERC1400の議論と提案の経緯』では「ERC1400の提案 (2018/9/10~9/15)」についての解説を行いました。第3回ではPolymath社がERC1400を実装したST-20を動作させる解説を行います。
第3回記事はこちら。