欧州発行プラットフォームの現状とは(Neufund編)

欧州発行プラットフォームの現状とは(Neufund編)

Neufundとは


Neufundは、ヨーロッパの金融ハブ・ドイツを拠点にするFifthForce社が運営する新興のセキュリティトークン発行プラットフォームです。(https://neufund.org/)2019年12月現在までにセキュリティトークンの発行を3件実施しています。

Neufundを利用したSTO


まず、Neufundプラットフォームを利用して、EU/EEAおよびドイツの免除規定に法って、私募によるセキュリティトークンを発行・購入するプロセスの詳細を紹介していきます。

発行体のトークン発行プロセス


ここでは、企業がNeufundを利用してトークンを発行するプロセスを順に説明していきます。
  1. 発行体(企業)はNeufundでアカウントを登録します。このとき、同時に発行体に対してKYC/AMLの実施・確認が行われます。NeufundはKYCプロバイダーと提携しているため、このプロセスを一気に実施することができます。
  2. 発行体は、Neufundが提供する「Term Sheet Ninja」のような販売テンプレートを利用することで、法的文書やランディングページ等を簡単に作成できます。また、Neufundは、法律事務所と提携することで、発行体にプラットフォームとして包括的なサービスを提供しています。
  3. 発行体の資金調達ニーズにあうトークンの要件をNeufundの開発者(ブロックチェーンエンジニア)が定義することで、最適なスマートコントラクトが提供されます。
  4. イーサリアム上で、要件定義されたトークンコントラクトをデプロイし、Equity Tokenを発行します。それが投資家に購入されると、資金調達が成功します。
  5. 発行体は、資金調達に成功した場合、Neufundに発行手数料を支払います。この手数料は、Neufundに投資している投資家にも分配されます。

投資家のトークン購入プロセス


ここでは、投資家がNeufundを利用して発行されたセキュリティトークンを購入するプロセスを順に説明していきます。
  1. プラットフォーム利用の申し込みを行います。このとき必要な個人情報を入力することで、プラットフォームへの登録と同時に投資家のKYC/AMLが行われます。プラットフォームに参加するとNeuMark Tokenが付与され、プラットフォーム利用料の分配を受け取ることができます。
  2. STOが実施されている中から、欲しいトークンの購入申し込みを行います。このとき、KYC/AML済みかどうかスマートコントラクトで検証が行われます。
  3. EtherもしくはEURに連動したEURT(EUR Token)により、代金、手数料を支払うことで、セキュリティトークンを購入できます。

リヒテンシュタインでの一般投資家対象STOの実施


電動バイク向けのデジタルガジェットを開発するクロアチアのGreypが、Neufundプラットフォームを利用して、リヒテンシュタインにて、最低投資額 €100 の株式型セキュリティトークンの販売を、2019年10月14日~11月27日の期間で実施、1,017人の投資家から約 €1.44M の調達に成功しています。( https://bit.ly/37Vg0vt

Neufundはリヒテンシュタインの規制当局FMAに関連書類を提出、最低投資額 €10 のセキュリティトークンをプラットフォームにて販売することを了承されています。

Neufundプラットフォームを利用予定のSTOプロジェクト


以下4プロジェクトのSTOが予定されています(https://platform.neufund.org/):
  • NGRAVE:ベルギー、ハードウェアウォレット開発
  • Emflux Motors:インド、電動バイク
  • MYSWOOOP:ドイツ、オムニチャネルの家電製品売買プラットフォーム
  • BLACK ONE ENTERTAINMENT GROUP : アジア、音楽、エンタメ

Neufundプラットフォームの詳細


以降では、Neufundプラットフォームの機能・サービスを掘り下げて解説していきます。

投資家ボーディング(審査/登録)


投資家はPlatForm/PF(Neufund)に登録する時に、KYC/AMLやEU/EEAの免除規定に準じた適格審査を行います。したがって一度登録すれば、個々の投資案件ごとに審査・登録は行われないというメリットがあります。また、案件毎の要件に応じて投資家の適格要件をフィルタリングして、White List/WLが作成されます。

譲渡制限


トークンや投資家の属性や条件による制御、保有トークンのロックアップ、トークン移転の可否通知などの譲渡制限がスマートコントラクトにより、その投資家それぞれの条件に合わせて発動されます。

所有や運営に関わる権利付与


株主名簿(CAP Table)に従って配当が投資家に渡されます。また株主総会議決権行使などに対応する自動投票機能も実装されています。

コミュニケーション機能 


トークンの移転やドキュメントの設定に関するイベント通知、自分が保有するセキュリティトークンの残高やオフライン書面の参照など、投資家はスマートコントラクトで実装されている機能を利用できます。

登録免除規定による発行実績


現在、Neufundを使って発行できるセキュリティトークンは、Equity Tokenのみとなっています。つまり、Neufundではセキュリティトークンを使って、株式(Equity)をトークン化したデジタル証券による資金調達のみが現状可能です。そのためBond(債権)tokenやFund tokenによる資金調達には対応していません(今後対応予定とのこと)。また、ドイツのようにDR*を発行する必要が場合は、Nominee(Custodian)としてSPVを設立する必要もあります。

上記のGreypを除く、Neufundを利用した登録免状規定による資金調達状況は、調達済みが2件で、セキュリティトークン発行プラットフォームNeufundの €3.4M、ICBM Capital Raiseの €12.6M です。(2019/12/01時点の情報)
*DRとは、英語表記「Depositary Receipts」の略で「預託証券」のことをいいます。DRは、ある国の発行体の株式を別の国でも流通させるため、現株を裏付けにして発行された証券のことです。例えば、A国でDRを発行するケースだと、A国以外の国(B国)で既に株式を発行済でかつA国以外に法人登記のある企業がEqity TokenをA国で発行するためには、裏付け資産を管理するSPV(特別目的事業体)をB国に設立して、そこにDR発行額分だけそこに現株を預け、DRを発行するという仕組みになります。

取引所との連携


以下4つの取引所との提携が発表されています。
  • Binance
  • BitBay
  • MSX
  • Blocktrade

具体的な連携内容と時期は未定ですが、セキュリティトークンの二次流通が可能になることで、そのトークンの流動性やより適切なトークン価格が形成されることが期待できます。(2019/09/05時点の情報です。)

法律事務所との連携


資金調達には多くの書類が必要ですが、Neufundプラットフォームは法的手続きを機能的にカバーしています。セキュリティトークンの発行に必要な書類を自動生成する機能(Term Sheet Ninja)があり、そのインタフェースに必要な情報を入力するだけです。これらの機能を利用することで、弁護士・法律事務所に相談することなく、法的文書を作成できます。

発行に必要な料金


基本料金として、調達資金総額の3%(EUR / ETH)と、発行したトークンの2%をNeufundに支払う必要があります。これらは資金調達後の支払い(後払い)です。調達に失敗した場合は、支払いをする必要はありません。またこのプラットフォームを効率的に活用して、資金調達を行うために必要なコンサルタントサービスへの支払いや、トークンコントラクトのアップグレードに必要なガス代(イーサリアムを利用するのに必要な費用)を負担する必要があります。しかしこのように支払いは一度限りで、継続的に発生はいたしません。

対応管轄地


基本的にEU/EEA内ですが、アメリカを除くグローバル対応が可能となっています。詳しくは弁護士事務所にお問い合わせください。

免責事項


本記事に掲載されている記事の内容につきましては、正しい情報を提供することに務めてはおりますが、提供している記事の内容及び参考資料からいかなる損失や損害などの被害が発生したとしても、弊社では責任を負いかねます。実施される際には、法律事務所にご相談ください。

技術・サービス・実装方法等のレビュー、その他解説・分析・意見につきましてはblock-chani.jp運営者の個人的見解です。正確性・正当性を保証するものではありません。本記事掲載の記事内容のご利用は読者様個人の判断により自己責任でお願いいたします。
     

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