ERC1400連載 第1回 ERC1400とは何か

ERC1400連載 第1回 ERC1400とは何か

ERC1400が必要とされる理由


 本記事では『ERC1400とは何か』をテーマにERC1400をわかりやすく解説していきます。今回、「ERC1400が必要とされる理由」をテーマに解説を行っていきます。なお当サイトでは過去にDeFi(分散型金融)に関する連載を行っており、その中で7-ST(Security Token)の概要・市場・STOプロジェクト紹介という記事でERC1400と関連のあるセキュリティ・トークンやセキュリティ・トークン・オファリングについて解説してあります。そちらも別途お読み頂けるとERC1400についての理解がより深まるかと思います。

背景


 2017年、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)を利用した資金調達が盛んに行われ、その中で多くのICO詐欺が発生しました。その後、各国の金融当局は証券取引法に則っていないICOを規制する動きが強まりました。そんな中、2018年ごろから既存の証券取引法を遵守する形で、トークンを発行して資金調達を行うという新しいムーブメントが台頭してきました。それはセキュリティ(証券)をトークン化して発行し、資金調達を行うことからセキュリティ・トークン・オファリング(STO)と呼ばれ、2019年には分散型金融(Defi)の中で、最も盛んな分野の1つになりました。

セキュリティ・トークンとは


 セキュリティ・トークン(ST)は、ICOなどで利用されるユーティリティ・トークンとは違い、証券をスマートコントラクトで実装するものです。そのためセキュリティ・トークンは、各国の証券法に準拠するために、複数の機能を持ち合わせる必要があります。現在ERC1400の中で議論されている機能には、以下のようなものがあります。
  • 発行管理
    • 特定の権限を持った人だけがSTを発行できる。
  • 譲渡制限
    • ホワイトリストに登録された投資家しかSTを保有できない。
  • 償還管理
    • STの償還が行える。
  • 強制譲渡
    • 法律違反者の資産を没収できる。
  • 投資家情報の管理
    • KYC/AMLの情報をオンチェーンで管理できる。
  • ドキュメントの管理
    • 証券に関係する法的な書類をオンチェーンで管理できる。
  • 保有者のトラッキング
    • 誰がトークン保有者であるか(必要な権限を持つ者が)確認できる。
  • 種類別トークン
    • 1つのSTに複数の資産の種類を設定できる。

 このようにSTを実装するスマートコントラクトには多くの機能が必要とされます。そしてその要件を実装するコントラクトのコードも複雑になります。

ERC1400が求められる理由


 これまで複数のSTの発行プラットフォームが、ERC20をベースにして独自機能を追加した、STの規格を作成してきました。有力なものにPolymathのST-20やHarborのR-Token、SecuritizeのDS-protocol、Swarm FundのSRC20などがあります。

 しかしそれぞれの発行プラットフォームが異なる規格を作成して、セキュリティ・トークンを発行していると、関係するプロバイダーはそれぞれのST規格にシステムやサービスを適応しなければならず、非常に手間がかかります。またセキュリティホールも生まれやすくなります。セキュリティ・トークンに関係するプロバイダーには、発行プラットフォーム以外にも複数あります。AML/KYCプロバイダー・取引所・カストディアン・インフラ(セカンダリ)・販売代理店・法律事務所などです。これらのプロバイダーの中でもそれぞれの企業が複数あります。多くのプレイヤーが異なる規格に対応する為に手間をかけることになり、STの普及の足枷にもなります。

 そのため、セキュリティ・トークンを発展させていく為には、業界標準規格を作成することが必要不可欠となっています。このような背景からERC1400が提案されました。

参考

Mapping out the Security Token Ecosystem
セキュリティトークンに含まれるプレーヤーのグローバルな外観

まとめ


本記事では「ERC1400が必要とされる理由」についての解説を行いました。ERC1400のような標準規格ができることで、セキュリティトークンがより発展しやすくなることが期待されます。

次回の第2回の記事では、ERC1400が提案された経緯について解説します。

第2回記事はこちら
     

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