はじめに
今回は、Ethereumなぜ生まれたのか、そしてどのように使われているのか、実例を交えて紹介します。
本記事は、過去にコンセンサス・ベイスが主宰していたオンラインサロンの記事です。記事は2017年~2018年にかけて執筆されたため、一部は、既に古くなっている可能性があります。あらかじめご了承ください。
今回の内容
第1章ではEtereumが生まれた経緯、第2章ではEthereumの利用例について説明します。
ゴール
Ethereumの思想や実際の利用例を知り、DApps開発に役立てる。
ターゲット
Ethereumに興味がある方を対象としています。
前提知識
一般のプログラミングやネットワークの基本及びBitocoinやブロックチェーン技術の基礎を前提知識とします。
当シリーズを第1回から読んでおくことを推奨します。
第1章 Ethereumが生まれた経緯
ビットコインで任意データを保存できるように
ビットコインは本来、価値の移動のみをブロックチェーンに記録するものでした。しかしビットコインが世の中で使われるにつれて、ブロックチェーンの特徴である中央機関無しで存在証明ができる機能をコイン以外の目的で使用したいと言う声が出てきました。それからトランザクションに40バイト(現在は80バイト)の任意のデータを保存できるようになり、さまざまなアプリケーションが開発されました。例えばProof of Existanceというサービスはビットコイン上にファイルのハッシュを格納して存在証明をするサービスです。
複雑なプログラムをブロックチェーンで
ビットコインで用いられるScriptというプログラミング言語では非常に限られた処理しか行なえません。 そこで、Ethereumの開発者であるVitalik Buterinはブロックチェーン上でより複雑な処理を行いアプリケーションを開発できるようなプラットフォームを作ることを考えました。これがEthereumの始まりです。
ビットコインに比べ、Ethereumではより複雑なプログラムを実行したり、任意のデータを保存できますが、そのため安全にするのが比較的難しいという特徴を持ちます。
Ethreumプロジェクトの開始とこれから
2013年にVitalik Buterin氏からホワイトペーパーがリリースされました。そして、2014年7月から8月に1BTC=2,000ETHの価格でクラウドセールを行い、31,529 BTCを集め、当時の価格1BTC=480USドル計算で約16億円の資金調達になりました。この資金を元に開発が行われ、2015年7月30日にFrontierと呼ばれるバージョンがリリースされました。
Ethereumのリリーススケジュールでは、Frontier、Homestead、Metropolis、Serenityと4段階が予定されています。Frontierは2015年7月に、現在のHomesteadは2016年3月にリリースされました。Metropolisは2017年中にリリースされる予定であり、Serenityはのリリース時期はまだ未定です。
第2章 Ethereumの利用例
前章のような経緯で生まれたEthereumがどのような使われ方をされているのかをご紹介します。基本的にEthereumではビットコインと同じようにアドレスを指定してEtherを送付することができるため、単なる暗号通貨として使用することができます。
独自トークン
Ethereumでは、通貨、コイン、権利といった独自のトークンを作成するコントラクトを作成することができます。そのため、Etherを受取り、独自トークンを付与するということがよく行われます。これは株式で言うIPOに似たICO(Initial Coin Offering)やクラウドセール(Crowd Sale)で使われます。他にも、アプリケーション内のインセンティブや投票、配当にも利用されます。これらはビットコインにおけるOpen AssetsやOmni、Counterpartyと同じような利用方法ですが、トークンの振る舞いを自分でプログラミングできるため良い意味では柔軟に、悪い意味では各自バラバラの動作をするコインが沢山発行される懸念があります。そのため、Ethereumではトークン標準化の提案(ERC20)がされています。
未来予測市場: Augur
AugurはEthereumのユースケースとしてよく言及されます。Augurは未来を予測する市場を提供するDAppです。動作としては、まずユーザが予想を作り(例えば、大統領選挙でどちらが勝つか?など)、参加者は暗号通貨を使いどちらが勝つかに投票します。一定期間後、選挙の結果をREPと言われるAugurのコインを持つ人が申告します。真実を報告するとREPがもらえ、嘘を報告するとREPが減るという仕組みです。その結果により、勝利した大統領に投票していた人は暗号通貨をもらえます。簡単に言うと、未来に関する賭け事です。
Ethereum上のアプリケーションとして実装するメリットとしてまず挙げられるのは政府に潰されないことです。今までも未来予測市場のサービスを提供する企業は存在していましたが、規制されたりサービス停止に追い込まれてしまうものもありました。Ethereum上のアプリケーションの場合、政府でもサービスを停止させるのが非常に難しいため、この市場の払い出しは自動化され、サーバのダウンや運営側の内部不正や倒産のリスクが低く、ほぼ確実に実行されることが期待できます。人も介在しないため、人的ミスもなく手数料が低くなることでしょう。
2017年7月時点ではAugurはベータ版でありデモしか動作しませんが、このDAppは非常に期待されています。その他にも、未来予測市場としてはGnosisなどがあります。
投資ファンド: The DAO
The DAOはEthereum上のベンチャーキャピタル・ファンドのような投資ファンドアプリケーションで、良い意味でも悪い意味でも非常に有名なプロジェクトです。The DAOはICOで約160億円相当(1ドル=100円計算)の資金を集めたため一躍注目を浴びました。しかしこのDAppにはバグが存在し、バグを利用して60億円が不正に移動するという事件が起きました。結局、このバグをアプリ側でなくブロックチェーン側で修正することでこの攻撃がなかったことにするという対策が取られ、これが多くの議論を巻き起こしました。
The DAO自体はVCファンドのようなものでした。多額の資金を集め、それを透明性のある状態でブロックチェーン上に置いておき、その資金の使い方を投資した人投票によって行うという仕組みです。Ethereum上でこれを行うメリットとしては、既存のVCとは違い、資金を世界からすぐに集められ、資金を使い道に意見、投票でき、その資金の流れが全世界に公開されている、ということが挙げられます。
その他の利用例
Ethereumでは自由にアプリケーションが作成できるため、非常に色々なアイディアが出てきています。それをまとめた「State of Dapps」というサイトでは、2017年7月時点で593のDAppsが掲載されています。その中には、アイディア段階、開発中、そもそもDApp なのか疑われるものもあります。代表的なものは以下です。
- ギャンブル (Etherplay, Blockjack, Etheroll)
- クラウドファンディング (WeiFund)
- ジョブ・マーケット (Ethlance)
- ID、個人認証 (uPort, Smart ID, KYC-chain)
- DAO (MakerDAO, GenesisDAO)
- ペグ通貨 (StabL, eDollar)
- ソーシャル・ネットワーク (AKASHA)
- 非中央集権型取引所 (EtherEx)
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