欧州発行プラットフォームの現状とは(Tokeny編)

欧州発行プラットフォームの現状とは(Tokeny編)

Tokenyとは


ルクセンブルクのtokeny solutions社が運営するTokenyは、ルクセンブルク、ロンドン、バルセロナ、パリを拠点とするセキュリティトークンの発行プラットフォームです。(https://tokeny.com/)Tokenyを利用することで、ルクセンブルクやリヒテンシュタインといったEUの金融ハブである小国でセキュリティトークンを発行することが可能であり、セキュリティトークンを利用した資金調達は今後増加することが予想されます。

Tokenyを利用したSTO


Tokenyプラットフォームを利用して、EU/EEAの免除規定に法って、私募によるセキュリティトークンを発行・購入するプロセスの詳細を紹介していきます。

発行体のトークン発行プロセス


ここでは、企業がTokenyを利用してトークンを発行するプロセスを順に説明していきます。
  1. 発行体(企業)はTokenyで資金調達を行いたい場合、連携するDIDプロバイダを利用して、企業のDID(分散型ID)を作成します。
  2. 購入できる投資家タイプを選択し、DIDプロバイダ(DID・KYC/AMLサービスを提供してくれる)に通知します。そのタイプをもとに投資家はそのトークンを購入可能かどうかDIDを利用して購入時に検証が行われます。
  3. セキュリティトークンのコントラクトは、基本的にはT-REXの規格が用いられます。(現状の開発状況としては、機能は限られています。https://github.com/TokenySolutions/T-REX/
  4. Tokenyプラットフォームと連携する各種専門家などのサポートを受けながら、発行体が主体となってトークンコントラクトをイーサリアムにデプロイします。
  5. デプロイしたコントラクトでセキュリティトークンを発行し、投資家がそのトークンを購入することで資金調達は成功となります。

投資家のトークン購入プロセス


つぎに、投資家がTokenyを利用してトークンを購入するプロセスを順に説明していきます。
  1. 投資家はTokenyプラットフォームに申し込みを行います。
  2. 発行体が指定しているDIDプロバイダーを経由して、自分のDID(分散型ID)を作成します。この時KYCも実施されます。そしてプロバイダーが新しく投資家のID情報をもつERC725・735コントラクト(Identity Smart Contract)をイーサリアムにデプロイします(投資家がデプロイすることも可能です)。
  3. 投資家はデプロイされたDID Contractにclaim署名者キーを追加します。このキーをコントラクトが保持することで、投資家の身元確認がコントラクト(ERC725・ERC735)に求められた時に、その鍵を用いて署名することで身元を証明することができます。
  4. 投資家はこのIDコントラクトのアドレスをプロバイダーに渡します。するとプロバイダはこのアドレスをIDレジストリというコントラクトに登録します。
  5. 購入したい発行トークンを申し込みます。このときそのトークンを購入可能な投資家かどうかIDレジストリを経由してDIDコントラクトによる署名によって、検証が行われます。
  6. 購入資金を支払うことで、セキュリティトークンを購入することが可能です。

Tokenyプラットフォームの詳細


以降では、Tokenyプラットフォームの機能・サービスを掘り下げて解説していきます。

投資家ボーディング(審査/登録)


投資家は、KYC/AMLの実施して、KYCプロバイダー経由で、ERC725・735(Identity Smart Contract)を利用して、オンチェーンで自分のID(分散型ID)を作成します。このDID(Decentralized ID)を用いた本人確認を採用している点は、非常に分散性レベルが高い(Decentralized を重視している)と言えます。またこの機能は現在150カ国以上に対応しており、グローバルにほとんどどの国に住んでいようと、Tokenyに投資家として登録することが可能な状態です(登録しても購入できるかどうかは案件毎の条件や適用される規制次第となります)。またWhite List/WLもコントラクトを利用して、オンチェーンで管理されます。

譲渡制限


トークンや投資家の属性や条件による制御、保有トークンのロックアップ、トークン移転の可否通知などの譲渡制限がスマートコントラクトにより、その投資家それぞれの条件に合わせて発動されます。Tokenyで実装するトークン規格の総称はT-REX(Token for Regulated EXchanges)と呼ばれ、この規格に準拠することで適格かつ承認された投資家のみがトークンの割り当てや移転を許可されます。また、Custody機能も持ち、発行者はトークンの供給を常に制御(mint/burn/freeze)することが可能で、投資家は保有するトークンを失うことはありません。

所有や運営に関わる権利付与


投資家への配当や投票/議決権といった機能は、現状では、T-REX ホワイトペーパー(https://tokeny.com/wp-content/uploads/2018/12/t-rex-whitepaper.pdf)やGitHub(https://github.com/TokenySolutions/T-REX/)には記載がないため、未実装と思われます。これらは、Equity Tokenには必須の機能となるため、今後実装されることが見込まれます。

コミュニケーション機能 


トークンの移転やドキュメントの設定に関するイベント通知、自分が保有するセキュリティトークンの残高やオフライン書面の参照など、スマートコントラクトで実装されているコミュニケーション機能を投資家が利用できます。

当局対応機能


取引停止の機能がトークンコントラクトには備わっており、何か問題が発生した際に、権限をもつ主体(金融規制当局など)がこれらの機能を執行して、問題に対処することが可能となっています。

登録免除規定による発行実績


Tokenyで発行できるセキュリティトークンの種類には、「Equity(株式)」、「Bond(債権)」、「Fund(ファンド)」、「Real Estate(不動産)」と豊富なラインナップとなっています。

一方、現状のTokenyでのセキュリティトークンの発行実績としては、調達失敗が1件、調達予定が2件と、まだ実績がないのが実態です。

取引所との連携


Tokenyでは、セカンダリマーケットとの提携を通じて、トークンの流動性の向上に取り組まれています。
  • Blocktrade
  • Archax
  • OpenFinance
  • DeltaBlock

Tokenyのサイトより提携企業の紹介を確認することが可能です。
https://tokeny.com/partners/

法律事務所との連携


Tokenyは、セキュリティトークン専門の弁護士と協力してコンプライアンスの確保をしています。
  • DLA Piper
  • Gide 255
  • DS Avocats
  • CMS
  • Fieldfisher
  • Hashtag Avocats

Tokenyのサイトより提携企業の紹介を確認することが可能です。
https://tokeny.com/partners/

BLACK MANTAとの連携


同じくルクセンブルクのBLACK MANTA社がドイツに設立した子会社BMCP GmbHが、ドイツの規制当局であるBaFinからライセンスを認可されドイツで運営開始するセキュリティトークン・プラットフォーム(The Black Manta Investment Platform)に、Tokenyがwhite-labelでプラットフォームシステムを提供、技術プロバイダーとして提携することが2019年10月30日付発表されています。(https://bit.ly/2Df6apY

JSTAとの連携


Tokenyは日本国内市場についても、ブロックチェーン技術を活用したセキュリティトークンに関する課題解決を目的とした日本国内の活動について、JSTAと基本合意書を2019年10月18日付で締結したとのことです。(https://bit.ly/34hp2kb

免責事項


本記事に掲載されている記事の内容につきましては、正しい情報を提供することに務めてはおりますが、提供している記事の内容及び参考資料からいかなる損失や損害などの被害が発生したとしても、弊社では責任を負いかねます。実施される際には、法律事務所にご相談ください。

技術・サービス・実装方法等のレビュー、その他解説・分析・意見につきましてはblock-chani.jp運営者の個人的見解です。正確性・正当性を保証するものではありません。本記事掲載の記事内容のご利用は読者様個人の判断により自己責任でお願いいたします。
     

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