10- DeFiの現状と課題、今後の展望について

10- DeFiの現状と課題、今後の展望について


ここまでは、DeFiとは何か、そのメリットや既存金融との違い、そして各領域の概要を解説してきました。本記事ではDeFi全体をデータと課題に焦点を当てて概観します。
これまで解説してきたそれぞれの分野がどの位進歩していてどんな課題を持っているのか、という点に着目していただけると良いと思います。

DeFiの現状をデータで振り返る

これまでのDeFiの成長を把握する為に有用なデータを以下に列挙します。

・ETH locked in Defi

DeFiのプロトコルにデポジットされているETHの総量をビジュアルで確かめることができます。一つ目の図が、uniswap(ピンク)、dYdX(グレー)、Compound(薄い緑)、Augur(紫)を比較したグラフです。全体としてデポジット量は増加していますが、その中でもuniswapとCompoundは突出して高いことがわかります。
下図は、上記図にMakerDAOを加えた図です。一目瞭然ですが、DeFiにおいて、Maker(濃い緑)がどれほどの影響力を持っているかどうかがわかります。

・DeFi Pulse

DeFi Pulseというサイトは、各分野・各プロジェクトごとに、どれだけのドルが使われているかというデータが算出されています。
注目すべきは、総額約$400M(400億円以上)の価値がDeFiのプロトコルで使用されているというデータです。Makerの占有率が非常に高いことがわかります。

DeFiの課題を整理する

ここからは、DeFiの課題を一つ一つ解説します。

・担保の必要性(主にレンディング)

担保の必要性とは、MakerやCompoud、Dharmaなどのサービスにおいて、現状アセットを借入れる際は必ず担保として何かしらのアセットをデポジットする必要性があるという問題です。
一般的な銀行や消費者金融などでは、私たちは無担保で借り入れを行うことが可能です。にも関わらず、DeFiの場合はこれが行えません。金融包摂を考えると、お金を持っていない人たちへの貸し出しを行うことが理想的かもしれませんが、担保が必要であれば、お金を持っていない人たちにさらなるハードルを課してしまっていることになります。
この問題の解決策として、分散IDや分散スコアリングを用いて、過去のサービスの利用履歴を蓄積・モデリングすることで限りなく担保を引き下げることが期待されていますが、未だ実用段階には遠いとされています。
この問題は、レバレッジ取引を行うデリバティブにおいても共通です。

・流動性が低い(主にDEX)

現在のDEXは、トラストレスという利点を持っていながらも、非常に流動性が低いという問題を抱えています。以下のデータはCEX(Centralized exchange)に対するDEX(Decentralized exchange)の利用割合を示しています。流動性が低いとユーザーは入ってこず、いつまで経っても流動性は上がりません、まさに卵と鶏、どちらが先かという問題です。
https://www.inwara.com/ico-data-centralized-exchanges-vs-decentralized-exchange
この問題の原因の一つとして、DEXの「UXの低さ」が挙げられます。メタマスクはUXの低さを補う手段ですが十分では無く、トランザクション処理スピードの遅さなどもUXを阻害する一因となっています。

・法規制の問題

当然ながら金融取引というのは厳格な信用を元に行われるべき経済活動なので、法規制はその他の領域と比較しても厳しいものになります。したがって、ライセンス獲得のハードルが高かったり、何らかの既存の規制に抵触することでイノベーションが抑圧されてしまうケースは少なくないと言えます。

・オラクル問題(主に分散型予測市場)

オラクル問題とは、簡単にいうと、ブロックチェーンの外部にあるデータをブロックチェーンの内部に入力する際に、その入力プロセスを分散的に行うことが非常に難しいという問題です。
AugurやGnosisなどのアプリケーションでは、サッカーの試合の勝敗や天気など、現実世界に起こった事象を元に取引が行われるため、誰かが正しいデータをブロックチェーンに入力する必要があります。
ただし、この誰かor何かが中央集権的だった場合、そもそもDeFiの意味を失ってしまいます。どこまでトラストレスにするかという議論にはなりますが、それでもオラクルはDEXやステーブルコインの価格フィードにも用いられていることから、ゆくゆくは非中央集権的に問題が解決され一般化していくでしょう。

・Ethereumブロックチェーンの課題

DeFiを語る上では、Ethereumブロックチェーンそのものへの理解と現状把握が欠かせません。Ethereumは現在、スケーラビリティ・プライバシー・セキュリティなどいくつもの問題を持っています。
スケーラビリティは現在最後のハードフォークであるSerenityやLayer2ソリューションであるPlasmaやShardingでの解決が試みられていますが、現状は秒間14~20件の処理しか行えないため、DeFiのUXを毀損していることは間違いありません。
そして金融取引においてはユーザーのプライバシーの問題も付随してきます。信用情報を記載するブロックチェーン自体がパブリックチェーンだと、適切に暗号化しない限りプライバシーが無くなってしまいます。
さらに、The DAOハッキング事件が記憶に新しいですが、スマートコントラクトの脆弱性をついたハッキングリスクは、多くのETH及びERC20トークンがデポジットされているDeFiの各スマートコントラクトにとっては大いに脅威となります。これに対応するためには、スマートコントラクトの監査やデバックなどの支援・セキュリティ技術向上が欠かせません。

最後に

DeFiという金融ムーブメントを概観してきましたが、意見はそれぞれだと思います。そもそも分散なんて必要ないと思う方もいるでしょうし、DeFiの可能性に魅せられた人もいるかもしれません。
DeFiは本シリーズで紹介したものだけで全てではありませんし、更に奥深く、まだまだ技術革新は続く筈です。これをきっかけに興味を持たれた方は、ぜひそれぞれの領域・プロジェクトをさらに深くリサーチしてみることをお勧めします。
     

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