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Moveとは
Moveは、Libraブロックチェーンに独自の取引ロジックやスマートコントラクトを実装するための新しいプログラミング言語です。安全性とセキュリティを最優先に設計されていて、例えばアカウントが持つ資産(リソース)を不正にコピーできないようにしたり、リソースの使用を所有者に限定する、といった機能を言語レベル(コンパイラやランタイムによるチェック)で提供しています。
Move言語で書かれたソースコードは、Move IR(Move intermediate representation)とも呼ばれ、コンパイラによってバイトコードに変換され、MVM(Move Virtual Machine)と呼ばれる仮想マシン上で実行されます。
特長
Move言語には以下のような特長があります。- 取引ロジックとスマートコントラクトを分離するために、トランザクションスクリプトとモジュールに分割されている。
- Libra自体がRust言語で作られていることもあり、Move言語もRustの文法に似ている。
- コンパイラによって、文法だけでなく、リソースの複製や再利用、破棄などのロジックに対してもチェックされる。
- eventによるトランザクション制御やGasによる実行制御の機能があり、Ethereumのスマートコントラクトと似ている。
Moveを動かしてみる
セットアップ
Moveは、LibraのソースコードをGitHubからクローンして、セットアップすることですぐに動かすことができます。以下にその手順をご紹介します。なお、LibraのGitHubは日々コミットがされ続けており、今回は、執筆時点のソースコード(コミット番号 502936fbd59e35276e2cf455532b143796d68a16)で動作確認していますが、将来変更となる場合もありますので、ご了承ください。1.LinuxやmacOS等のOSを準備します。
筆者は、Ubuntu Server 18.04.2 LTS で試しました。メモリはセットアップ時に多く消費するため、最低でも4GB程度あると良いと思います。
2.Libraを動かすためのRustをインストールします。
Libraのセットアップ時にインストールされるパッケージ群の中にもRustがあるのですが、筆者が試したところ、その後のMoveの実行に失敗してしまったため、Rustは予めインストールされておくことをお奨めします。
インストールが終了したらシェルを再起動します。
$ curl https://sh.rustup.rs -sSf | sh
$ exec $SHELL -l
3.LibraのソースコードをGitHubからクローンします。
$ git clone https://github.com/libra/libra.git
4.Libraのセットアップを行います。 セットアップを開始すると、依存関係のあるパッケージ群も一緒にインストールするかと聞かれるので、Yを選択します。ソースのビルド等も一緒に実施するため、完了までに少し時間がかかります。
$ cd libra
$ ./scripts/dev_setup.sh
これでMoveを動かす準備は整いました。
テストの実行方法
Moveで作ったスマートコントラクトをテストネットで動かしてみたいところですが、執筆時点では、テストネットへスマートコントラクトをデプロイすることはサポートされていないようです。そのため、ローカル環境でテスト実行することで動作確認を行います。サンプルプログラムを使ってテストを実行してみます。
$ cd libra
$ ./scripts/dev_setup.sh
※初回の起動時は、テストの実行に必要なパッケージをダウンロードしてビルドするため時間がかかります。最後までテストが実行され、
test result: ok. 245 passed; 0 failed; 0 ignored; 0 measured; 0 filtered out
という結果が出力されたら完了です。
終わりに
Moveに関するドキュメント
Moveについて記載されているドキュメントは、公式ドキュメントの以下が参考になります。- Getting Started With Move Moveのコンセプトや機能など、Moveを知る上での初歩的な内容が書かれています。
- Move: A Language With ProgrammableResources(テクニカルペーパー) Move言語の文法に関する説明や中身の構造など、Moveの深い部分の内容が書かれています。
まとめ
Libraの新しいプログラミング言語Moveについて紹介し、セットアップとテストを実行するまでを行いました。セットアップが簡単ですぐに実行できるので、ぜひ試してみてほしいです。
次回は独自のプログラムを書くことに挑戦してみたいと思います。