- 1. はじめに
- 2. Peer-Ordererモデル
- 2.1. (1/7) クライアントアプリケーションがChaincode Aの実行を担当するPeer E0にトランザクション実行を申請(propose)します。
- 2.2. (2/7) Peer E0は上記トランザクションを検証、実行結果(Chaincode A実行に必要なデータを紐付)に署名(sign)しクライアントアプリケーションに結果を通知します。
- 2.3. (3/7) クライアントアプリケーションはポリシーにて追加署名が必要となっているPeer E1とE2に追加署名を要求します。
- 2.4. (4/7) Peer E1とE2は署名結果をクライアントアプリケーションに通知します。
- 2.5. (5/7) クライアントアプリケーションはトランザクションを生成しOrderer Cに配信します。
- 2.6. (6/7) Orderer Cは受信したトランザクションをブロックに整列(order)、検証(validate)し、ポリシーで決められたPeerへledgerへの追加を委任(commit)します。
- 2.7. (7/7) Peerは受信したブロックを検証し、ledgerに追加します。
- 3. 免責事項:
- 4. 参考資料:
- 5. 会社紹介
はじめに
これから3回にわたり、Hyperledger Fabric v0.6とv1.0の違いを技術的に解説していきたいと思います。
v1.0ではv0.6がもつスケーラビリティとプライバシーにかかわる課題解決のため以下変更が実施されました。
- 第1回: スケーラビリティ
- v0.6では全ノードが合意形成とChaincode実行を実施
- v1.0ではChaincodeの実行管理をする「Peer」と、トランザクションの順序整列をする「Orderer」に分類、トランザクションの並列/分散処理を実現
- 第2回: プライバシー
- v0.6では全ノードが全Chaincodeを閲覧可能
- v1.0ではどのノードでどのChaincode実行に関与するかを制御可能
- 第3回:認証(authentication)・権限認可(authorization)
- 上記実現のため、認証・権限認可およびID管理が変更
- 上記実現のため、認証・権限認可およびID管理が変更
本記事は、過去にコンセンサス・ベイスが主宰していたオンラインサロンの記事です。記事は2017年~2018年にかけて執筆されたため、一部は、既に古くなっている可能性があります。あらかじめご了承ください。
Peer-Ordererモデル
ブロックチェーンにおけるコンセンサスとは、ブロックを構成するトランザクション実行にかかわる申請・署名・整列・確認・委任という一連の検証過程を意味します。
- 申請(propose):トランザクションの実行を申請すること
- 署名(sign):トランザクションを検証、実行結果を署名すること
- 整列(order):トランザクションをブロックに整列すること
- 確認(validate):ブロックの正当性を確認すること
- 委任(commit):ブロックのledgerへの追加を委任すること
v1.0ではこの5つの検証過程を2つの役割に分類しています。
検証における2つの役割
- 承認(endorsement):申請(propose)・署名(sign)
- 合意(consensus):整列(order)・確認(validate)・委任(commit)
v0.6のPBFT(Practical Byzantine Fault Tolelance、分散合意形成アルゴリズム)では全ノードがコンセンサスとChaincode実行の全てを担っていましたが、v1.0では効率的処理をめざし以下2種類のノードに上記2つの役割とトランザクション処理を分担させています。
2種類のノードと役割
- Peer:承認(endorsement)、Chaincode実行、ledger管理
- Orderer:合意(consensus)
では以下7つのステップからなるトランザクション処理例をもとに2種類のノードの役割を確認していきましょう。
- (1/7) クライアントアプリケーションがChaincode Aの実行を担当するPeer E0にトランザクション実行を申請(propose)します。
- (2/7) Peer E0は上記トランザクションを検証、実行結果(Chaincode A実行に必要なデータを紐付)に署名(sign)しクライアントアプリケーションに結果を通知します。
- (3/7) クライアントアプリケーションはポリシーにて追加署名が必要となっているPeer E1とE2に追加署名を要求します。
- (4/7) Peer E1とE2は署名結果をクライアントアプリケーションに通知します。
- (5/7) クライアントアプリケーションはトランザクションを生成しOrderer Cに配信します。
- (6/7) Orderer Cは受信したトランザクションをブロックに整列(order)、検証(validate)し、ポリシーで決められたPeerへledgerへの追加を委任(commit)します。
- (7/7) Peerは受信したブロックを検証し、ledgerに追加します。
なお、図中のE:Endorsing PeerとはPeerを、C:Consensus ServiceとはOrdererを、Smart ContractとはChaincodeのことをそれぞれ意味しています。
(1/7) クライアントアプリケーションがChaincode Aの実行を担当するPeer E0にトランザクション実行を申請(propose)します。
サンプルトランザクション (1/7)
(HyperledgerMeetupDec6.2016.pdfより抜粋)
(2/7) Peer E0は上記トランザクションを検証、実行結果(Chaincode A実行に必要なデータを紐付)に署名(sign)しクライアントアプリケーションに結果を通知します。
サンプルトランザクション (2/7)
(HyperledgerMeetupDec6.2016.pdfより抜粋)
(3/7) クライアントアプリケーションはポリシーにて追加署名が必要となっているPeer E1とE2に追加署名を要求します。
サンプルトランザクション (3/7)
(HyperledgerMeetupDec6.2016.pdfより抜粋)
(4/7) Peer E1とE2は署名結果をクライアントアプリケーションに通知します。
サンプルトランザクション (4/7)
(HyperledgerMeetupDec6.2016.pdfより抜粋)
(5/7) クライアントアプリケーションはトランザクションを生成しOrderer Cに配信します。
サンプルトランザクション (5/7)
(HyperledgerMeetupDec6.2016.pdfより抜粋)
(6/7) Orderer Cは受信したトランザクションをブロックに整列(order)、検証(validate)し、ポリシーで決められたPeerへledgerへの追加を委任(commit)します。
サンプルトランザクション (6/7)
(HyperledgerMeetupDec6.2016.pdfより抜粋)
(7/7) Peerは受信したブロックを検証し、ledgerに追加します。
サンプルトランザクション (7/7)
(HyperledgerMeetupDec6.2016.pdfより抜粋)
なお、トランザクションをブロックに整列するためのOrderer-Peer間のメッセージングにはKafka(pub-sub型メッセージングシステム)を利用しています。
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参考資料:
・Docs » Welcome to Fabric
http://hyperledger-fabric.readthedocs.io/en/latest/index.html
・Hyperledger Fabric V1 – Meetup
http://files.meetup.com/19726545/HyperledgerMeetupDec6.2016.pdf
・Hyperledger Fabric 1.0 概要、第1回Hyperledger Tokyo Meetup 2017年3月16日講演
株式会社日立製作所 山田仁志夫、Hitachi America 大島訓
・エンタープライズ・ブロックチェーンに求められるセキュリティ要件とIBMの取組み
2017年6月27日講演 日本IBM株式会社 野村幸平
会社紹介
弊社(コンセンサス・ベイス株式会社)は、2015年設立の国内で最も古いブロックチェーン専門企業です。これまでに、大手企業の顧客を中心に、日本トップクラスのブロックチェーンの開発・コンサルティング実績があります。ブロックチェーンに関わるビジネスコンサル・システム開発・教育・講演などありました、お気軽にお問い合わせください。
会社ホームページ
https://www.consensus-base.com/