パブリック・ブロックチェーンのビジネス利用時の問題点

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パブリックなブロックチェーンをビジネス利用しようとした時の問題点

これまで弊社では、ブロックチェーン技術を利用したビジネスに関するコンサルティングや提案をしてきました。その中で、ビットコインやその技術を実際にビジネスにしようとすると、いくつか共通の問題点が出てくることがわかりました。

ブロックチェーン関連ビジネスは非常に新しく、実際にやってみないと気づかない問題点も多いので、今までの経験と共に問題点とその解決方法をご紹介します。
今回は、問題点のみに注力してご紹介し、解決方法は別の記事にて詳細に述べる予定です。

ビジネス上の6つの問題点

まずは、問題点を一覧でご紹介します。

  1. 送金する側が送金手数料を払う
  2. 送金するために内部コインが必要になる
  3. 多量の取引をすると、取引手数料が高くなる
  4. 送金手数料が固定ではないので、コストの想定が難しい
  5. 全ての取引がオープン
  6. 自分達のコントロール下、責任で運用ができない

解決方法

結論を手短にまず述べますと

上記の問題点は、プライベート・ブロックチェーン、パーミッションド・ブロックチェーンと言われる技術で解決することが可能です。ただ、パブリックなブロックチェーンと比べて良いソリューションというわけではなく、メリットとデメリットがあるので、プライベートチェーンは特徴を理解し、適材適所で利用する必要があります。

解決方法やプライベート・ブロックチェーンの技術については、別記事に詳細に書く予定です。

前提

  • ビットコインやビットコインのブロックチェーンを使ったビットコイン2.0と言われる技術(Colored Coins, Counterpartyなど)を想定しています
  • Ethereumのような今までのパプリックな実装でも同じような問題点があるでしょう

問題点の詳細

問題1. 送金する側が送金手数料を払う

ビジネスによっては、送金する側にコストを払ってもらいたくない場合があります。
例えば、ブロックチェーンでデジタル回数券を実現するビジネスを考えます。ブロックチェーン上で、1,000円で100円分11枚の回数券を発行する場合を考えましょう。ユーザが、その回数券で支払う(送金)する場合に、回数券の他に手数料をネットワークに払うことになります。例えば、1,000円で買った回数券を利用するたびに、1-10円取られます。10円 x 10回の場合、手数料が100円になってしまいユーザのメリットがなくなります。これは、ユーザもビジネス側も受け入れがたいでしょう。

この場合に出てくるビジネス側の要求としては、以下の2つが考えられます。

  1. 送金手数料をゼロにする
  2. ビジネス側が手数料を負担する

現状の解決策として、回数券の配布時に送金手数料分のコインをユーザに送る、という対策をする場合もあります。しかし、送ったコインが余ってしまったり、ユーザが何度も送金することはできなくなるなど、解決方法としては綺麗ではありません。

問題2. 送信時に内部コインが必要になる

独自コインを送信する場合に、独自コインの他に内部コインを送付しなくてはならない場合があります。
例えば、Counterpartyと呼ばれるプロトコルで独自コインを作成、独自コインを送信する場合、その送信に手数料としてBTC(ビットコイン)が必要になります。

実際に問題になった例で説明します。
GetGemsというメッセンジャーアプリで利用されるGEMZというコインがあります。このGetGemsは、ビットコインは一般ユーザには難しいという問題を解決するために考えられたアプリです。ユーザに簡単に使ってもらうために、GEMZというコインをビットコインのブロックチェーン上で作り、メッセンジャー内で簡単に送れることを目指したアプリでした。しかし、そのGEMZを送信するのにBTCが必要でした。ユーザがGEMZというコインをもらっても、一旦自分でビットコインを入手してからでないと、GEMZが送金できなかったのです。ユーザにとってよりわかりにくいという問題や手数料の問題が起きたため、現在ではサーバ側でBTCとGEMZの送信をするという方法(オフチェーン)に移行しました。

独自コインを送るのに、別のコインが必要というのは、ユーザには直感的にわかりにくいでしょう。
そして、GEMZを送信するために、一旦BTCを入手して、送信元アドレスに送金するというのは、非常に手間がかかります。

この問題は、ビットコインのブロックチェーンやEthereumのブロックチェーンを利用したアセットを使ったビジネス応用では、問題になることが多いでしょう。

パブリックチェーンにおける解決方法としては、ブロックチェーンを利用しない方法(オフチェーン)が考えられますが、これはブロックチェーンではなく、ユーザ登録が必要になることが多いでしょう。
パブリックなブロックチェーンにおいては、スパムを防止するため送信者に手数料を課しますが、プライベート・チェーンの場合は、取引手数料を無料にすることが可能です。

問題3. 多量の取引をすると、取引手数料が高くなる

多人数の方にコインを配る場合の取引手数料の高さが、よく指摘されます。ビットコインの場合の手数料は、場合にもよりますが、一回1-10円ほどのことが多いでしょう。1万人にコインを遅延せず配りたい場合、1万円から10万円ほどかかることになります。

多くの人に送信する場合や、多くの回数を送信したい場合に問題として指摘されることがあります。

既存のパブリックなブロックチェーンでは、マイクロペイメント・チャネル等の解決案がありますが、使い勝手も悪く、まだ実用的ではありません。
プライベートチェーンでの解決方法としては、手数料をゼロにするという方法が考えられます。

問題4. 送金手数料が固定ではないので、コストの想定が難しい

ブロックチェーンのビジネスのご提案をする時に「運用コストはいくらですか?」とよく聞かれます。ビットコインの手数料を考えた場合、送金手数料はネットワークの状況等で変動するため「◯万円〜◯万円になると思われます。」という想定での回答しかできません。
つまり、運用コストはビットコインのネットワークの状況次第になります。2、3年以上は運用するであろうビジネスでは、コストがいくらになるか明確にわからないということは、ビジネス上のリスクでもあります。

プライベート・チェーンでの解決方法として、送金手数料をゼロにする、固定の金額にすることが可能です。

問題5. 全ての取引がオープン

ビットコインやEthereumなどのパブリックなブロックチェーンを利用する場合、取引のデータは誰でも見える状態になります。どの位の量があって、いつ、どのアドレスからどのアドレスに、どの位の量が送られたかが、誰でもわかってしまいます。
どの位のお金相当のものが、いつどのように動いているのかを、他社、他人に知られることを嫌がる企業もあるでしょう。また、ユーザのプライバシーの問題になる可能性もあり、それを容認できない場合もあるでしょう。

ミキシングサービスなど対策はありますが、それにも時間や取引手数料がかかる、手間が増えるなどの問題もあります。

プライベート・チェーンでの対策としては、決まった人しか見ることができないようにする方法があります。

問題6. 自分達のコントロール下、責任で運用できない

まず、ネットワークやプロトコルに問題が出た場合、様々な人のネットワークであるビットコインへの対処を自分たちで迅速にするのが非常に難しいです。

  • 例1: ネットワークへのspam攻撃により、承認時間が遅くなる
  • 例2: 間違った取引があった場合でも、自分達で取引を戻すことができない
  • 例3: バグが出た場合、自分達だけの意向で修正などはできず、お願いして待つ形になる

攻撃や不具合、ユーザのミスなどの問題が起きた時に、ユーザの資産を守れない可能性があります。ユーザから「承認スピードが非常に遅くなった」と問い合わせがあった場合に対応が難しいでしょう。
プライベート・ブロックチェーンの場合、自分たちで管理するブロックチェーンですので、良い意味でも悪い意味でも、攻撃への対処、バグ修正、取引の変更が可能で、自分達の責任の元にブロックチェーンを運用することが可能です。

銀行への応用におけるビットコイン2.0の問題点

参考のため、MultiChainが指摘する銀行ビジネスへの応用への問題点も記載しておきます。

  • Low capacity
  • Poor governance
  • Unknown costs
  • Anonymous miners
  • All activity public
  • No AML/KYC
  • One bloated ledger
  • Poor asset support

引用元: MultiChain – Private multicurrency blockchain platform

上記のように、ビジネス要件によってはアンチマネーロンダリングのための機能が必要になる場合もあるでしょう。

プライベート・ブロックチェーンの可能性

プライベート・ブロックチェーンや許可型(パーミッションド)ブロックチェーン、分散型台帳は、ブロックチェーン業界では非常に注目されている技術で、活発な議論がされています。特に世界的な銀行、証券会社などの金融機関がリサーチをはじめています。IBMやLinux FoundationのHyperledger Projectなど世界的な機関が研究、実証実験をしています。
プライベート・ブロックチェーンは上記以外にも可能性を秘めています。プライベート・ブロックチェーンの詳細記事は、またの機会に書く予定です。

最後に

弊社にてHyperledgerやErisやHydraChain、MultiChain、Open Blockchainなどのプライベート・ブロックチェーンの各実装の調査や大手企業様と実証実験を行っています。上記で述べたように実際にビジネスで応用をしようとした場合に気づく問題点と、その対策方法をノウハウとして持っています。パブリック、プライベートなブロックチェーンのビジネスにおける問題点や応用に関するご相談がある場合は、是非、弊社コンセンサス・ベイスへご相談下さい。

     

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